大判例

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最高裁判所第一小法廷 平成元年(行ツ)89号 判決

上告人

下坂浩介

被上告人

日本弁護士連合会

右代表者会長

阿部三郎

右訴訟代理人弁護士

飯田秀郷

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の弁護士に関する規制は、公共の福祉のため必要なものというべきであって、憲法二二条に違反しないことは、最高裁昭和三三年(あ)第四一一号同三四年七月八日大法延判決(刑集一三巻七号一一三二頁)の趣旨に徴して明らかであり、所論のその余の違憲主張は、独自の見解に基づき抽象的に原判決の不当をいうものにすぎず、採用することができない。以上と同旨の原審の判断は正当として是認することができ、論旨はいずれも採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官大堀誠一 裁判官橋元四郎平 裁判官味村治 裁判官小野幹雄 裁判官三好達)

上告人の上告理由

弁護士会の強制加入制度の憲法適合性について

弁護士会への強制加入制度(法八条、九条及び三六条)は、憲法一八条、一九条及び二二条に違反する。

原審(東京高裁)は、

……弁護士の職務の公共性から、……公共の福祉の要請にもとづき……その監督を通じて、弁護士自治の徹底を期し、その職務の独立性を確保すること……

と述べている。

上告人は右の制度は、弁護士(会)という、中世のギルド的な特権集団を維持することこそ、国民の大局的な利益(公共の福祉)に反するのであり、弁護士会の総意という体制的(多数派)な制度によって、少数派的な思想(弁護士)が抑圧されることこそ、公共の福祉に反するものである、と主張するのであって、上告人の主張は、いずれ数十年先には実現される、と確信する。

弁護士会の懲戒処分は、原審が述べる如く

広い意味での行政処分としての懲戒罰であると解すべき……

ではない。

弁護士会は、上命下服の行政体ではない筈である。

それは様々な階級的利益を擁護する弁護士の雑居的な集団であって、多数派が少数派を抑圧する集団であってはならない筈である。

しかるに弁護士会の実体は、懲戒制度が右の如き抑圧機関として運用されている。

原審は、弁護士会の「実体」に全く無知であり、建前論に終始しているに過ぎない。

従って弁護士会の懲戒処分にも憲法第三一条の適用を認めるべきである。

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